Mac mini 2018のBootCampにてSwitchエミュレータ「YUZU」を試し、動作には兼ね満足していた。
しかし、一部のタイトルやシーンによっては動作スピードが低下したり、しばらくプレイするとクラッシュが起こるなど安定しない。
メモリは32GBまで増やしたのでメモリ容量がクラッシュの原因とは考えにくく、内蔵GPUのVRAM(ビデオ用のメモリ)不足が原因ではないかと考えた。
そこで「eGPU」を試してみると、動作が改善!
この記事では、エミュレータにも絶大な効果を発揮したeGPU「Razer Core X」を紹介する。
もくじ
eGPU Box Razer Core Xを購入
基本情報

Image :
Razer Core X | Razer Core X Chroma | |
---|---|---|
電源 | 650W | 700W |
USB-C出力 | 100W | 100W |
取付可能カードサイズ | 3スロットカード | 3スロットカード |
USB, LANポート | - | ○ |
購入先リンク
Razer Core X
Razer Core X Chroma
eGPU Box Razer Core Xの外観
▼正面〜左側面。こちらは内蔵したグラフィックボードの吸気口が設けられる。正面はスリットが入り、落ち着いたデザインだ。

▼右側の吸気孔にはRazerのロゴマークが入る。ここは好き嫌いが分かれる部分だが、そこまで目立たないと感じる。

▼背面には排気孔やスイッチ、Thunderbolt 3の接続ポート。上位モデルにはUSBポート×4とLANポートが備わる。

eGPU Box Razer Core Xを接続
グラフィックボードの取付
▼背面のハンドルを引き起こし、手前に引くと中身がスライドして出てくる。

▼内部にはファンや予備電源が備わっている。

▼このボードにグラフィックボードを接続。取り外すときは白いレバーを押しながらグラフィックボードを引き抜く。

▼取り付け前に背面のパネルを取り外す。ネジは指で回せる。

▼グラフィックボードをセット。今回はParitの「GeForce GTX1070Ti JetStream」を使用したが、macOSではAMD Radeonを使用しないと動作しない。

▼グラフィックボードをセットしたら、付属のネジで忘れず固定する。

▼「GeForce GTX1070 Ti JetStream」の補助電源は8ピン+6ピン。Razer Core Xには6ピン+2ピンが2つ備わるので問題なく取り付けできた。

Razer Core Xの電源は650W、GeForce GTX1070 Ti JetStreamの推奨電源は500Wなので、出力も問題なし。
Mac mini 2018と接続
▼Mac mini 2018とは本体下部のThunderbolt 3で接続。モニターとの接続はHDMIにて接続した。

▼本をスペーサーにして、無理やりデスク下に設置したMac mini。左側のThunderbolt 3コネクタに接続。

▼付属するThunderbolt 3ケーブルは50cmほどしかないので、一旦仮置きして動作させることにした。

▼しかし、あまりにも邪魔なので床にクッションを敷いて縦置き。

この置き方だと邪魔にならず、デスク下のMac miniと近いので短いThunderbolt 3ケーブルや、飛び出て壁にぴったりと置けない電源ケーブルの問題はクリアできた。もちろん、想定された使い方ではないので予期せぬ不具合を招く恐れがある。
▼モニターも27インチ一台にして、デスク上スッキリさせた。

▼eGPUを接続し、NVIDIAから最新のドライバをインストール。デバイスマネージャーをひらくと「GTX1070Ti」が確認できた。

内蔵GPUと併用できない
eGPUの接続中は内蔵GPUの使用ができず、eGPUからの映像出力しか使用できないようだ。上のデバイスマネージャーでは「NVIDIA GeForce GTX 1070 Ti」のみが表示されており、内蔵GPUの「Intel UHD Graphics 630」は表示されていない。
eGPUと接続した状態でMac miniとモニターをHDMIなどで直接接続しても、映像は出力されない。また、OS起動中にeGPUと内蔵GPUの切り替えはできなかった。
Mac mini 2018 eGPU接続前後のベンチマーク
性能を数値で測るベンチマークにて、どのくらい性能が向上するか比較してみた。
ドラゴンクエストXベンチマーク
▼設定はデフォルト。スコアはeGPUありだと大幅に向上することが確認できた。


3DMark (Time Spy)
続いて3DMarkで計測。こちらでもスコアに大きな差がついた。


eGPU Box Razer Core Xを接続してYUZUを試す

ベンチマークではeGPUの装着によって大きくスコアを伸ばすことができた。実際のゲームプレイではどのような結果になるだろうか。
eGPUなしで試したタイトル
Mac mini 2018のレビュー記事で紹介したときは以下のような動作結果となった。eGPUを取り付けして動作させるとどのようになるだろうか。
タイトル | 動作 | 備考 |
スーパーマリオ オデッセイ | △ | しばらくすると落ちる |
ゼルダの伝説ブレス オブ ザ ワイルド | △ | とても重い 5〜10FPS |
ポケットモンスター レッツゴーピカチュウ | 〇 | 軽快 |
ポケットモンスター ソード | △ | しばらくすると落ちる |
ウルトラストリートファイターⅡ | ◎ | 軽快 一部モードで落ちる |
あつまれどうぶつの森 | 〇 | Vulkanは落ちる |
eGPUを接続して動作させると
eGPUを接続してYUZUを動作させると、動作速度や安定性の向上が見られた。しかし、プレイ中に時々落ちてしまうことはあり、これはYUZU自体の開発が進むことで解決されるかもしれない。
タイトル | 動作 | 備考 |
スーパーマリオ オデッセイ | ◯ | 軽快 |
ゼルダの伝説ブレス オブ ザ ワイルド | △ | 少々重い 15~20FPS |
ポケットモンスター レッツゴーピカチュウ | ◯ | 軽快 |
ポケットモンスター ソード | ◯ | 軽快 |
ウルトラストリートファイターⅡ | ◎ | 軽快 一部モードで落ちる |
eGPU接続前はOpenGLだととても動作が重かったが、接続後はOpenGLの動作速度が大きく改善。動作はもちろん、シェーダーキャッシュの読み込み速度もかなり速くなった。
YUZUでもeGPUは大きな効果を発揮することが分かった。
動画編集や映像制作ではどうなる?
ゲームだけではなく、動画編集や映像制作などクリエイティブな作業にもeGPUは大きな効果を発揮する。Mac使いでグラフィックス性能を求める人の多くはクリエイト作業かもしれない。
調べてみたところ大変興味深い記事を見つけた。
Taka Tachibana氏の記事
彼の記事では、Mac mini 2020に「Razer Core X Chroma × Radeon RX580」を接続。eGPUありとなしで映像関連ソフトの動作がどれくらい改善するのかテストしている。
改善結果は?
記事では、動画編集で最もよく使われているであろう「Adobe Premiere Pro」にて4Kの短い動画レンダリングをテスト。eGPUを接続していない状態では3分以上かかっているが、eGPUを接続すると26秒という大きな改善がみられる。
さらに、内蔵メモリを8GBからeGPU+36GBにするとメモリだけを増やしても得られなかった効果を得たとの結果も。他にも「After Effects」や「Blender」、「DaVinci Resolve」といったソフトでテストを実施している。
Mac miniでクリエイティブな用途にeGPUを使いたいなら、ぜひチェックしておこう。
eGPU Box Razer Core XのGood&Badなポイント

Goodなポイント
- 電源が高出力
- デザインがGood
- 簡単にパワーアップ
- 大きいカードでも取付可能
電源が高出力
Razer Core Xでは650Wの電源を搭載し、Razer Core X Chromaは700Wの電源を搭載。高性能なグラフィックボードを搭載するのにあたって、余裕のある電源となっている。
デザインがGood
真っ黒に塗装された金属製ボディは割と落ち着いたデザインとなっている。正面の本体スリットデザインなどもGood。
簡単にパワーアップ
USB-Cと同形状である「Thunderbolt 3」にて、eGPUに対応したPCとケーブル一本接続するだけでグラフィックス性能を向上できる。さらに、Razer Core XのThunderbolt3ポートからは最大100Wの電力供給ができ、ノートPCであれば充電も同時におこなえる。
大きいカードでも取付可能
Razer Core Xは最大3スロットカードの装着が可能。本体サイズの大きなハイエンドのグラフィックスボードも取付可能となっている。
そして、ハイエンドグラフィックスボードに必要な高性能電源も備えているので、高性能な映像処理を必要とする人にはもちろん、あとからグラフィックスボードのグレードアップを考えている人、はたまた、どのeGPUボックスを選んでいいかわからない人にも向いている。
Badなポイント
- 高額
- 拡張ポートなし
- スリープ中の動作
- 本体サイズが大きい
高額
執筆時点で(2020年7月)時点での価格は、Razer Core Xが約4万円、Razer Core X Chromaが約5万円ほど。グラフィックカードど合わせるとなかなかの金額となってしまう。
そのため、自分の用途に合うのか、簡単に試すことができないのが難点だ。
拡張ポートなし
実際に使ってみて不便だったのが、USBポートが一つ塞がってしまうこと。Razer Core XにはUSBポートがなく、USB機器の接続数が制限されてしまう。
上位版のRazer Core X ChromaにはUSBポートが4つ備わるが、下位版のRazer Core XはUSBハブなどを使ってポートを増やす必要がある。
スリープ中の動作
Mac miniをスリープモードに移行してもRazer Core Xの電源ファンは回ったまま。eGPUがこういうものか、Razer Core X特有のものかはわからないが、少々気になる部分だと感じた。
ただ、電源ファンの音はそこまで大きくないのが○
本体サイズが大きい
Mac mini 2018よりRazer Core Xはかなり本体サイズが大きい。省スペースのためMac miniを選んだが、eGPUを接続すると少々スペースを取ることになる。
その代わりに、Razer Core Xには大型のグラフィックボードを取付可能で、Mac miniやノートPCなどグラフィックス性能を大きく向上させることができる。さらに複数の機器で使えるといったメリットも挙げられる。
デスクトップPCに組み込んだグラフィックボードを他のPCで使うことはできないが、eGPUであれば、接続する機器の変更が可能だ。
おわりに : かんたんに性能強化するならeGPU
eGPUであれば、Thunderbolt3ポートを持ったPCをケーブル一本でサクッとグラフィックス性能を強化できる。自作デスクトップPCと比べるとコスパは悪いが、組み立てや接続の手間が少ない。
ノート型のPCでも接続が可能なため、ゲームや動画編集などの専用PCを用意することなく、台数を減らすこともできるだろう。そして、私が今回接続したMac miniのように、Mac mini, MacBook Air, MacBook ProなどのMacシリーズで使えるのも大きなメリットだ。
お手軽にパワーアップしたい、PCの台数をなるべく減らしたい、もしくは複数のPCで使いまわしたい、Macで使いたいならeGPUを検討してみよう。
参考サイト
Razer Core X
Razer Core X Chroma
Radeonのグラフィックボード
▼macOSで高いグラフィックス性能が欲しいならRadeon Vegaシリーズ。Black Magicより安価に高性能eGPUを入手できる。
▼コスパが高く、Mac用でよく選ばれるモデル。550, 570, 580がラインナップ。
GeForceのグラフィックボード
▼GeForceの高性能ミドルクラスグラフィックボードRTX2070。
▼もう少し買いやすい価格で高性能なGTX1660。