2020年5月1日、ドン・キホーテにて7インチUMPC(ウルトラモバイルパソコン)が19,800円(税抜き)という破格値で発売された。MiniBookやMAG1を試した私もとても気になる商品だったので、早速購入してじっくりと触ってみた。
この記事ではUMPC「NANOTE」の使用感や良いところ、いまいちなところをお伝えしたいと思う。
もくじ
NANOTEのスペックなど

基本情報
NANOTE UMPC-01-SR | |
---|---|
OS | Windows 10 Home 64bit |
CPU | Atom Z8350 |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 64GB eMMC |
ディスプレイ | 1920 × 1200 323ppi タッチパネル対応 |
キーボード | 日本語 |
バッテリー | 19Wh 3.8V 5,000mAh 公称7時間稼働 |
拡張スロット | - |
生体認証 | - |
操作 | 光学トラックポイント |
カメラ | 0.3MPフロントカメラ |
ワイヤレス通信 | WiFi : 802.11 b / g / n BT : 4.0 LTE非対応 |
有線LAN | なし |
接続ポート | USB Type-C × 1 USB Type-A 3.0 × 1 3.5mmジャック × 1 microHDMI × 1 microSD(256GBまで) × 1 |
サイズ | 181 × 113.6 × 19.6mm |
重さ | 約520g |
価格 | 19,800円(税別) |
ベンチマーク
処理性能はAtom Z8350なのでお察し。だが、結構問題ないという肯定的な意見も。
CINEBENCH
Geekbench

ドラクエベンチ

CrystalDiskMark

公式サイト
楽天市場のリンク
NANOTEの外観
上部
▼天板にはロゴがなく、シンプルなデザイン。

▼すっきりとしており、19,800円としては上々の質感だ。

▼大事に使うなら傷から保護するフィルムを貼り付けたい。
下部
▼本体下部も刻印などがなくすっきりとしている。

本来はライセンスコードと製造元の2枚のシールが貼られているが、見た目が良くないので蓋の裏側に移設した。
側面
前

▲スピーカーは前面に2つ配置されている。音質はそれなり。
後

▲後部には排気ポートがあるが、ファンレス仕様のため風は出てこない。OEM製造元にはファンのオプションが存在するようだが、NANOTEに取り付けするのは難しそうだ。
右

右側にはポート類が並ぶ。microSDは256GBまで対応となっているが、 512GBのものも動作するとのこと。
microSD 256GB
microSD 512GB
Type-Cは映像出力不可となるものの、ハブを使ってカードリーダーやUSBメモリは使えるようだ。
左

左側には何もなし。
ディスプレイ
▼解像度は1920×1200と高解像度。

▼視野角も広く、ディスプレイは満足度が高い。

NANOTEには最初から保護フィルムが貼り付けされているが残念なことに、2箇所気泡が入っていた。しかし、19,800円のPCに過度な期待は禁物だ。
▼Amazonでは交換用フィルムが販売されており、光沢以外に反射防止タイプもある。
キーボード
▼キーボードはかなり特殊な配列。

素人お断りの「変態配列」でカスタマイズは必須だ。キートップ自体も小さいので、練習しないと使いこなせない。
また、この部分の筐体はプラスチックが用いられているようで、チープさを感じる。
CHUWI MiniBookと外観比較
8インチのUMPCであるCHUWI MiniBookと、7インチのNANOTEを並べて外観を比較してみた。
上部
▼NANOTEは小型のMiniBookより、さらに一回り小さい。

価格も半額程度なので、より気軽に外に持っていける。
下部
▼MiniBookには冷却ファンや拡張スロットがある。

NANOTEはファンレス仕様なので少々熱が心配だが、使ってみた感じではそこまで発熱の心配はなさそうだ。
側面
前

▲NANOTEは全面、MiniBookは左右の側面にスピーカーが配置される。
後

▲MiniBookの通気ポートは背面にも設けられる。ヒンジの構造は同じだ。
右

▲NANOTEのフルサイズUSBは本体右側の3.0ポートのみ。MiniBookにはUSB2.0のポートも備わる。
左

▲MiniBookの左側に備わるType-Cポートは映像を出力することができる。また、HDMIはminiHDMIとなる。
ディスプレイ
▼NANOTEは2万円という安さながらMiniBookと同じ解像度のディスプレイを搭載。

発色や視野角もMiniBookと遜色なく、NANOTEには優れたディスプレイが搭載されていると感じる。
キーボード
▼MiniBookのキーも慣れが必要だが、NANOTEはさらに苦戦しそう。

キートップが小さく、tabキーなど多用するキーがFnキーと同時押しになるなどNANOTEは更なる試練が待ち構える。またNANOTEのキートップにプリントされた文字のセンターが一部でずれていたり、日本語が「明朝体」になっているところや、それ以外でも変なフォントが楽しめる。
▼MiniBookにはキーバックライトと指紋認証が搭載される。

NANOTEにはそんな気の利いたものは搭載されていない。ないものをどうやってクリアするのかを楽しむのだ。
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MiniBookと同じボディの製品
NANOTEを分解
裏蓋を開け銅板を外す
▼裏蓋を外すと熱伝導シートが貼り付けられていた。

さらに内部基板は放熱を促す銅板で覆われている。この銅板から熱伝導シートで金属製の裏蓋へ熱を逃している。
▼銅板を外すとここでも熱伝導シートが用いられていた。

グリスによって密着させているかと思ったが、CPUなどの熱も熱伝導シートによって放熱している。標準で貼り付けされている熱伝導シートは面積も小さいので、MiniBookでおこなった放熱カスタマイズができそうだ。
基板の前面と背面
外した基板を撮影。空きスロットはなし。
基板からUSBの取り出しなどを試みる人もいるようだ。
前面

背面

MiniBookと内部を比較
NANOTEとMiniBookの内部を見比べるとMiniBookがいかによくできているかわかる。NANOTEは「おもちゃ」っぽくて実に面白い。


充電器とモバイルバッテリーで充電計測
NANOTEの充電能力を計測したところ、高速な充電には対応していないことが分かった。しかし、旧規格のものなど、様々なモバイルバッテリーが使えることもわかり、NANOTEの大きな魅力を発見した。
付属充電器
▼付属の充電器だと7Wほどで、高速な充電はできないようだ。

Baseus BS-C915
▼試しに最大65Wを出力できる高性能なものを接続したが、出力は変わらず。

モバイルバッテリー
SMARTCOBY8000 &10000
▼小型でPD対応のSMARTCOBY8000。

▼大容量タイプのSMARTCOBY1000。

MiniBookではスリープを解除すると使えないなど相性が出たが、NANOTEではどちらのモバイルバッテリーも使用可能だった。
RP-PB186
▼さらに高出力なRP-PB186だが、同じ出力となった。

旧規格モバイルバッテリー
Type-A端子しか持たないPD非対応製品でも試してみたところ、問題なく利用可能であった。NANOTEは高速充電はできないが、充電器やモバイルバッテリーの対応幅が広いようだ。


NANOTEをカスタマイズ
どのようにカスタマイズすれば、使い勝手が良くなるか考えるのもUMPCの楽しみ方の一つ。今回はやらないが、AndroidやChromeOS、LinuxなどのOSをインストールしても面白そうだ。
キーボード
キーボードは「Change Key」というソフトを使って役割を入れ替え。

IMEの設定で無変換→IMEオフ、変換→IMEオンに設定し、Macと同じように一回キーを押せば日本語と英語を切り替えできるように。よく使う「Tab」キーも「Fn」を押さなくても使えるので快適になった。
「Alt」や「ろ」「Caps」は「Fn」キーと同時押しする必要があるが、個人的に使用頻度が低いのでこれで良しとした。
光学ポインターでスクロール
光学ポインターではスクロールできないが、フリーソフトでいくつかスクロール可能にできるものがある。MiniBookで使用した「W10Wheel」だとNANOTEでは使いにくく、今回は「WheelPLUS」をインストールし、右クリックを長押しするとスクロールできるように設定した。
表示の大きさを変更
設定→システム→ディスプレイ→拡大縮小とレイアウトで200%から175%に変更し、表示領域を広げた。
文字が小さくなってしまうデメリットがあるので、見やすい範囲でお好みで調整。
また、表示がぼんやりとしてしまうが、画面解像度を1920×1200から、1440×900に変更すると若干のパフォーマンスアップが期待できる。
アップデートと容量開放
カスタマイズではないが、アップデートについても記しておこうと思う。NANOTEはデータの保存容量が64GBとなっており、Windows10 1909へアップデートすると空き容量がかなり少なくなる。
そしてアップデートにとても時間がかかった。
ISOを使ってアップデート
▼時間短縮にはISOファイルからアップデートすれば良いとのこと。
容量の解放
▼Windowsのプロパティを開いて「ディスククリーンアップ」→「システムファイルのクリーンアップ」と進む。

しばらく待つと大きな容量のファイルが検出されるので、チェックを入れて削除。
▼削除後は40GBほど空きスペースを確保できた。
ただし、以前のバージョンに戻すことができなくなるので、使い込んだマシンでやる場合は新バージョンでのソフトウェア動作チェックをしっかりやってから実行したい。
ブラウザを変更する
NANOTEの初期状態で搭載されている以前の「Edge」ブラウザでは、YouTubeなどの動画再生でも処理が重い。Windowsアップデートをおこなって「ChromiumベースのEgde」にしたり「Chromeブラウザ」を使用することで解消される。
BTをオフにする
NANOTEはBluetoothが有効だと、W-iFiの速度が低下しやすい傾向があるようだ。
▼左がBTオン、右がBTオフ。
Bluetooth機器を使っていない場合はオフに設定しておいた方がよさそうだ。
スピーカーの音質を改善
NANOTEのスピーカー位相はどうやら「逆相」になっているようで、私のNANOTEも逆相になっていた。配線を繋ぎかえることで「正相」になり、しっかりとした音像を得られる。
また、標準で有効になっているイコライザーをオフにすることで音質が改善する。
CPUとメモリのブーストアップ
BIOSメニューからCPUの制限を解除したり、メモリの動作クロックを変更することで動作を若干よくすることができる。
NANOTEの不具合
タッチパネルが動作しない
今回入手したNANOTEでは問題なかったが、コネクタがきっちりと接続されておらず動作しないケースがあるようだ。うまく動作しない場合は接続不良疑ってみよう。
また、タッチの位置がおかしい個体もあるようだ。そして、設定からタッチパネルの調整をしてしまうと、位置がずれた状態で補正が掛かってしまうとのこと。
うっかり補正した場合は、補正をリセットすれば元に戻るようだ。
画面回転センサーがおかしい
タブレットモードへ移行し画面を回転させようとすると、うまく回転機能が動作しないことがある。
▼カメラが「上」の状態ではうまく回転できない。

▼縦持ちするときはカメラが「下」USB端子が「上」でないと回転しない。

すべてのNANOTEでこうなるかはわからないが、画面回転がうまく動作しないときは「端子が上」で試してみよう。
また、画面を下に向け、キーボード面を上の方に向けた状態では上記と逆の動作となる。
マウスカーソルが飛ぶ
使ってみて気になったのが「カーソルが飛ぶ」症状。テキストを入力していると、時々突然意図しない場所に文字入力されてしまう。
どうやら、光学ポインタの「タップしてクリック」が誤作動しているようだ。調べてみると「光学ポインタにテープを貼ると改善される」というような情報があった。
どうしても気になったら試してみようと思う。
Officeが起動しない
10インチ未満のデバイスではMicrosoft Officeが無料で使用できる。7インチのNANOTEでももちろん使用可能で、デスクトップにはあらかじめショートカットが設けられる。
しかし、起動するとすぐに停止してしまうトラブルがあった。ただ、これはWindowsアップデートを済ませれば修正され、うまく動作した。

ライセンス認証できない
私のNANOTEでは問題なかったが、初期設定時にライセンス認証ができない場合があるようだ。マイクロソフトへの電話で、ライセンス認証をおこなうことになるとのこと。
Good, Badポイント
Goodポイント
- 小型 / 軽量
- ファンレス
- 価格が安い
- 入手性が高い
- 表示能力が高い
- タブレットモードが使える
小型 / 軽量

7インチのボディと520gという重量で、とても取り回しがいい。小さめのバッグや服によってはポケットに入れることもできる。
鷲掴みも容易で、タブレットモードでも扱いやすい。小型のバッグでも充電器やモバイルバッテリーと一緒に余裕で持ち運べる。
▼私は以下の小型バッグを使用。
ファンレス
発熱が小さなCPUなのでファンレス構造となっており、使用中に気になるファンの音がしないといったメリットがある。キーのタイプ音も小さめなので静かな場所にも向いていそうだ。
価格が安い
NANOTEの魅力はなんといっても価格の安さ。19,800円(税抜)でなかなか楽しむことができる。
入手性が高い
通販での入手はできないものの、全国にある「ドン・キホーテ」で購入可能。
表示能力が高い
低価格なのに1920×1200の高解像度で驚きだ。視野角や発色もよく、ディスプレイには不満がない。
タブレットモードが使える

360°開くことができるおかげで手に持って使いやすい「タブレットモード」やデスクの上に置いて動画鑑賞などに向いた「テントモード」が利用できる。
また、180°に展開した際、力が掛かっていたのが解除され、はっきりと「180°展開になった」とわかるようになっている。
Badポイント
- キーが小さい
- 筐体がチープ
- 処理性能が低い
- Type-Cで映像出力不可
- 画面輝度がもう少しほしい
キーが小さい
キートップが小さめで若干キーが打ちにくい。しかし、この小さいキーがだんだんと可愛らしく見えてくる。
筐体がチープ
19,800円で販売できる端末を作るには原価をかなり下げる必要がある。キートップのフォントや筐体の素材をよくみるとチープさはあるが、ロゴを廃したデザインや天板の質感などはよくできている。
処理性能が低い
これも当たり前のことなのだが、低価格PCなので当然処理能力は低い。そのため、初心者が手を出すと痛い目を見ることだろう。
Type-Cで映像出力不可
Type-Cポートから映像出力ができる機種が多いが、NANOTEはType-Cポートから映像出力することはできない。外部モニターへの映像出力はmicroHDMIのみ。
画面輝度がもう少しほしい
UMPCは気軽に持ち運べるのがメリットで、気分転換に屋外で記事の執筆をするのに使っている。NANOTEを日光の下で使ってみると、輝度が若干低く少し見えにくく感じた。
おわりに:玄人向けの「玩具」
価格の安さと入手しやすさで、手に入れることは簡単なNANOTE。しかし、処理性能の低さから「向いた用途」の幅が狭く、ブラウジングや動画鑑賞ですら快適とは言えない。
もちろん人によるが、NANOTEは自宅用メインPCや持ち運び用サブPCを持っていて、なおかつ「実用」ではなく「玩具」として楽しむ用途に向いたPCだと感じる。性能も価格もとても「尖った」面白いPCなので、UMPC好きなら楽しめるだろう。
ほかのUMPCを試したことがなければ、MiniBookやMAG1もぜひ試してほしい。私はNANOTEを試してみてNANOTEのいいところも楽しめ、ほかのUMPCの優れたところを確認することができた。